2月7日の衆議院総選挙をパンチャンガで読む

パンチャンガで読む選挙戦

――時間は、どのような判断を社会に要求していたのか

選挙という出来事は、結果だけを見れば単純です。勝者と敗者が分かれ、数字が並び、次の政治日程が始まる。しかし、その背後で社会がどのような状態で判断を下していたのか、という点は、ほとんど語られません。
私は今回、その「判断が行われた質」そのものを観測対象にしました。

用いたのは、インド占星術における時間論「パンチャンガ」です。
パンチャンガは未来を当てるための占いではありません。むしろ、その瞬間に人や社会がどのような振る舞いを取りやすいか、どのような扱い方が求められているかを読むための枠組みです。
個人の行動だけでなく、集団・制度・社会的イベントにもそのまま適用できます。

今回の選挙戦をひとつの「社会的プロジェクト」と見なし、私は次の四つの時間を起点としてパンチャンガを読みました。
解散報道、公示日、期日前投票開始、そして投票日です。
以下は、それらを通して見えてきた「時間の要求」の記録です。


目次

解散報道という起点

(2026年1月19日 18:00・東京基準)

この瞬間のパンチャンガは、非常に特徴的でした。
ティティはクリシュナ・パクシャのシャシュティ(6)。これは祝祭や高揚ではなく、「負荷」「避けられない工程」「訓練」を示す段階です。
社会が「選択の喜び」に入る前に、まず「引き受けなければならない状況」に放り込まれた、そういう始まりでした。

ナクシャトラはアーシュレーシャ(9)。言葉、心理、絡みつき、毒と薬。ここにヨーガ・ヴリッディ(増大・誇張)が重なります。
この組み合わせが意味するのは、言葉がそのまま伝わらない時間です。文脈は剥がれ、断片が膨張し、意図とは異なる形で増殖していく。

実際、この解散報道以降、政策そのものよりも、発言の一部や語調、切り取られた表現が強く消費されていきました。
しかしこれは誰かの未熟さというより、時間の性質がそうさせたと見る方が正確です。

この選挙戦は、冷静な比較から始まったのではありません。
感情と言語が絡み合い、物語が先に暴れ出すところから始まった。
この初期条件は、最後まで尾を引きます。


公示日 ― 選挙戦の出生

(2026年1月27日・日の出基準)

公示日は、選挙戦という行為そのものの「出生」にあたります。
ここで時間の質は明確に変わります。

ティティはシュクラ・パクシャのトリティヤ(3)。完成された形を提示するより、動きながら整えることを求める段階です。
そしてナクシャトラはプシュヤ(8)。養育、管理、責任、持続。ここが今回の選挙戦の核心でした。

プシュヤは「良いことを言ったか」ではなく、「それを維持できるか」「面倒を見続けられるか」を問うナクシャトラです。
理想や断言は評価されにくく、運用能力、管理能力、現実への接続力が試されます。

つまりこの選挙戦は、勢いで押し切るために生まれたのではありません。
行き過ぎた言葉や期待を、現実に引き受け直すための場として設定されていたのです。

解散時点で広がりすぎた物語を、ここからどう管理し、どう生活に戻すか。
それが時間から突きつけられた課題でした。


期日前投票開始 ― 判断が個人に降りる

(2026年1月28日)

期日前投票の開始は、判断の重心が明確に変わるタイミングです。
この日を境に、選挙は「政治的言説」から「個人の生活判断」へと降りていきます。

この段階では、強い言い切りや煽る表現は力を失います。
代わりに問われるのは、
それは自分の生活の中で耐えられるか
続いたときに破綻しないか
という、ごく現実的な感覚です。

公示日が設計図なら、期日前投票開始は実装開始です。
ここからは理念よりも手触り、主張よりも運用感覚が判断を支配します。


投票日 ― 静かな責任としての選択

(2026年2月7日)

投票開始の朝7時、ティティはエーカーダシー(11)。
削ぎ落とし、執着からの距離、理想の断念を意味する段階です。
この時間に動き出した判断は、衝動的なものではありませんでした。

「これが一番良い」ではなく、
「これなら引き受けられる」
という基準での、重く静かな選択です。

投票終了の20時、ティティはドゥヴァーダシー(12)。
ナクシャトラはハスタ、ヨーガはサウムヤ。
派手な高揚も極端な失望も残りにくく、結果を受け取り、次に移るための時間でした。

勝敗よりも印象に残るのは、終わらせ方と、その後をどう処理していくかです。


総括 ― この選挙が示した時間の構造

この選挙戦を一文でまとめるなら、こう言えます。

言葉と感情が先行して始まり、
生活と責任の感覚で静かに終わる選挙。

正しさを競う時間ではなく、
扱い方の知性が試された時間でした。

何を言ったかよりも、
どの時間で、どのように扱われたか。
その積み重ねが、社会の判断を形づくります。


おわりに

パンチャンガで社会を見ると、出来事は偶然ではなく、その時その時に要求されている「振る舞い方」への応答として現れてきます。
次に似た局面が訪れたとき、私たちは内容だけでなく、時間そのものを読むことができるでしょうか。

それが、この選挙戦が残した最も重要な問いだと私は感じています。

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