惑星の強さディグニティ

「ディグニティ」と呼ばれる概念は、惑星が天球上の特定の位置にあることにより、その力が強化されたり弱まったりする状態を示す。
惑星のディグニティは、人々の生活の様々な面への影響の読み解きにおいて重要な鍵となる。

本記事では、惑星が示す様々なディグニティの状態、すなわち高揚(Exaltation)、ムーラトリコーナ(Mooltrikona)、定座(Own Sign)、友好(Friend Sign)、中立(Neutral Sign)、敵対(Enemy Sign)、減衰(Debilitation)を解明する。

特に、高揚、ムーラトリコーナ、減衰の度数に焦点を当て、これらの配置がホロスコープにどのように現れ、何を意味するのかを詳細に説明する。

さらに、具体的なホロスコープの例を用いて、これらのディグニティの状態にある惑星が個人の運命にどのような作用をするのかを検証する。惑星の強さと表現の変化を理解することは、占星術実践において不可欠だ。

惑星の星位とはなにか

この図にあるように、丸をつけたものは特別な配置となっており、鑑定時には注意が必要である。

Su=太陽→高揚
Me=水星→減衰
Sa=土星→MT(ムーラトリコーナ)
Mo=月→減衰

惑星の星位の種類

星位の種類は以下の9つ。

  1. 高揚 Exaltation 一番強く、素晴らしいが過剰になることも。
  2. ムーラトリコーナ Mooltrikona 素晴らしい
  3. 定座 Own sign 良い結果
  4. 強い友好 Grate Friend Sing とても快適
  5. 友好 Friend sign 快適
  6. 中立 Natural Sign どちらでもない
  7. 敵対 Enemy sign 不快
  8. 強い敵対 Grate Enemy sign とても不快
  9. 減衰 Debilitation 一番弱く、十分な結果が得られない

惑星の星位とハウス

TORAJAによるインド占星術ノートより。

この表は惑星7つについて、どの位置でどの同数で各星位を授かるかを一覧にした表である。
この表では強い友好、中立、強い敵対については省略している。

高揚、ムーラトリコーナ、減衰についてはそれぞれの度数も考慮される。

例えば月は高揚とムーラトリコーナが同じ牡牛座にあり、0-3は高揚、3-27がムーラトリコーナとなるため注意が必要なのだ。

また、月を除く惑星が、自室がムーラトリコーナとなっている。
(諸説あり・月のムーラトリコーナは蟹座であるとする研究者もある)

この度数や配置はインド占星術を学ぶものがまず覚える項目である。
一度覚えてしまえば忘れることはない。
そしてとても大事な考え方であろう。

高揚、ムーラトリコーナ、減衰が起こすこと

友好や敵対ももちろん大事な指標ではあるが、ここでは特に高揚、ムーラトリコーナ、減衰について見ていく。

高揚(Exaltation)

高揚はチャートにおいてとても重要である。

この配置があればいろいろな意味で有利であり、この強さは考慮しなくてはならない。

例えば、写真の太陽は牡羊座0-10度で高揚する。

太陽は獅子座の支配星である。
太陽は権力とリーダーシップの象徴であり、強い意志を持つ。

皆さんが持つ牡羊座のイメージにぴったりなのではないだろうか。
まさに、その太陽の特性が一番つよく出るのが牡羊座なのである。

ラーシチャートにおいて、この度数に太陽を持つ人は強く威厳があり人を引き付ける指導者となるに違いない。
太陽の場合は生まれによって決まるので4/14頃~4/24生まれと限定されてしまうのだが、この期間に生まれたものが必ず最高指導者となるかは決定などではない。あくまでも要素の一つに過ぎないことを頭の片隅においておくべきである。

太陽以外の場合はどうであろうか?

それぞれの惑星が持つ意味を最大限に発揮すると考えるのがよろしい。

注意点:高揚は、場合によってはその強度が強すぎる場合があり、いつでも大吉ではない。

ムーラトリコーナ(Mooltrikona)

ムーラトリコーナは月以外は自室にある。

自室というのは、ハウスの支配星のことである(詳しくは関連項目を参照)

ムーラトリコーナの位置は図を参照してほしい。

なぜ、月だけが牡牛座なのか

月のムーラトリコーナが牡牛座にあるとされるのは、インド占星術の伝統的な原則と、牡牛座が月の特質を最も良く表しているという観点からだ。ここでいくつかの理由を考察してみよう。
  1. 安定性と快適さ: 牡牛座は地のサインであり、安定性、快適さ、物質的な豊かさを象徴する。月は心情、感情、安心感、そして日常生活の快適さを支配する惑星だ。牡牛座のこれらの特質は、月のもたらす心の安らぎや満足感と調和している。
  2. 物質的な豊かさ: 月はまた、豊かさと肥沃さをもたらす惑星と見なされる。牡牛座は物質的な価値や資産と強く関連づけられており、このサインで月はその養育的な側面を最大限に表現できる。
  3. 感覚と喜び: 牡牛座は五感と快楽を支配するサインであり、月は個人の感情や感覚に密接に関わっている。牡牛座にある月は、快適な生活、芸術、美しいものへの愛着、そして感覚的な喜びを高めると考えられている。
  4. 安全性と感情の癒し: 月は母性、保護、世話をする能力とも結びついている。牡牛座はその堅実で確実な性質から、安全性と心理的な基盤を提供する。ムーラトリコーナにある月は、個人が内面的な安定と感情の癒しを見つけるのを助けるとされている。
このように、牡牛座は月がその本質的な特質を自然に表現し、育むことができる場所として選ばれている。ムーラトリコーナは惑星がもっとも強く、かつバランスの取れた方法で表現される位置であり、牡牛座は月にとってこの理想的な環境を提供するからなのである。

どうして蟹座ではいけないのか。

蟹座は、実際に月の支配星座であり、感情、母性、そして慈しみの象徴だ。しかし、ムーラトリコーナとしては牡牛座が選ばれるのは、次のような理由による。
  1. バランスと調和: ムーラトリコーナは惑星が最もバランスのとれた強さを示す場所だ。蟹座での月は非常に強いだが、感情的な反応が過剰になりがちだ。これに対して、牡牛座での月は感情的な安定と物質的な世界での満足感をもたらし、内面と外面の世界の間でバランスを保つ。
  2. 過剰な感情を避ける: 月が蟹座にあるときは、感情が強調され、感情的な安定性が不安定になる可能性がありる。蟹座は感情の深さを象徴するが、ムーラトリコーナにおける月の影響はより穏やかで、現実的な基盤と感情のバランスを保つ。
  3. 物質的な実現: 月のムーラトリコーナが牡牛座に位置することで、感情的な充足感とともに物質的な安定性や豊かさが強調される。蟹座は内面の世界に関連しているため、牡牛座における月は感情的な安寧を外の世界で実現することを助ける。
  4. 固定された品質: 蟹座は可変的な水のサインであり、感情や慈しみの表現が変動しやすい。牡牛座は固定された地のサインであり、ここでの月はその持続的な品質によって感情的な安定と実用性を提供する。
このような理由から、インド占星術では、月のディグニティが最もバランスが取れていて、強く効果的な表現を見せるムーラトリコーナは牡牛座に割り当てられている。蟹座では、月はその力を最大限に発揮するが、その影響はムーラトリコーナの位置としては求められるバランスよりも感情的な側面に重きを置きがちになるためだ。

ムーラトリコーナによって何が起こるのか

ムーラトリコーナは(月を覗いて)自室にある。つまり、自分が一番快適な部屋にいるので、リラックスした状態で最高のパフォーマンスを発揮すると言える。

高揚と違い、過剰にそのエネルギーを放出することがないため実質一番良い状態と言える。

ムーラトリコーナにある惑星は常に良い結果をもたらすと考えてよい、そのくらい「吉」なのである。

減衰(Debilitation)

星が減衰すると、その力を発揮することができない。

例えば、水星はその知的さ、論理力を発揮できずポンコツに成り下がるし、金星ならそのはつらつとした女性らしさや芸術性を発揮できず、影の支えとなったり、ものすごくシャイになったりする。

高揚のときと真逆と考えればよいのだ。

減衰の状態では、惑星は次のような特性を示す

  • 表現力の低下:惑星が支配する分野において、自己表現が抑制されたり、不明確になったりすることがある。
  • 機能不全:惑星の持つポジティブな特質や機能がうまく機能しないことがある。
  • 課題と困難:惑星が支配するライフテーマや分野で障害や挑戦に直面しやすくなる。
  • 内面化:外部に表現する代わりに、惑星のエネルギーが内面に向かい、自己反省や内省の要素を強めることがある。

減衰は時としてネイティブに致命的な傷を与える。
それ故に減衰があるチャートではその取扱はとてもデリケートにならざるを得ない。

しかし、そんな最悪とも思え減衰にも一般つ逆転のチャンスが有る。それがニーチャバンガヨーガである。
(別項目:ヨーがまたはニーチャバンガラージャヨーガの項目を参照)
インド占星術においては、減衰した惑星もまた特定の条件下で「ニーチャバンガラージャヨガ」という特別な救済の組み合わせを形成し、その結果としてその惑星のネガティブな影響を打ち消すことができる場合があるのだ。

まとめ

ディグニティはインド占星術において、惑星が特定の星座に位置することによって示される強さや弱さを表す重要な概念である。高揚、ムーラトリコーナ、減衰といった状態は、それぞれ惑星の力が最大限に発揮される場合、バランスが取れている場合、または大きく弱まる場合を示している。これらのディグニティの理解は、個々のホロスコープを解釈する際に欠かせない。

ディグニティの状態によって、惑星はそのポジティブな影響を強く示すこともあれば、逆に課題や困難を引き起こすこともある。しかし、どのようなディグニティの状態であっても、それは個人がその星のエネルギーをどのように利用し、調整するかによって異なる結果を生むことが可能である。

特に減衰の状態は、通常ネガティブな影響が強調されがちであるが、ニーチャバンガラージャヨガのような特定の配置によっては、その効果を打ち消し、驚くほど肯定的な結果をもたらすことがある。これは、占星術が単なる運命の読み取り以上のものであり、個人の自己改善や成長の機会を提供するツールであることを示している。

したがって、ディグニティの概念は、占星術の理解を深め、より有意義な洞察を得るために非常に有効である。それぞれの惑星がどのような影響を与えるかを知ることは、個人の人生においてより良い選択をするための一助となる。

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